わたしはうとうとしながら、小人に関する不思議な本を読んでいた。
寝てる間に何をするわけでもなく、忽然と現れる。そして小人が現れると、何日か家から出られなくなってしまう...らしい。
寝る間際に読んだので、内容はそれしか覚えていない。その日はそのままベッドで眠りについた。
翌日、いつもの時間に目を醒まし歯を磨いていると、よくわからない大きな違和感を覚えた。
外がとんでもなく静かで何となく家から一歩も出たくないような、そもそも玄関に足を赴けたくもないというか...そんな気持ち悪い感覚に陥った。
歯磨きを終えてキッチンへ行き、電子レンジにナポリタンを放り込んだ。加熱しながら、ぼんやり考え事をする。
すると、冷蔵庫の陰から小学生くらいの小さな男の子が顔を出した。
白い服に身を包み、童顔だけどキリッとした面持ちだ。
だけどわたしは特別驚きもしなかった。なんだか疲れていて、それどころではない。
そこで、前の晩に読んだ本を思い出す。もしあれが本当だとしたら、この少年が小人なのか?
「ないない、妙にリアルな夢を見てるだけだ」。そう思い部屋を見渡すと、隅っこに小さな飛び出す絵本が置いてあった。
その本からは、カラフルな家が飛び出している。
見つめていると、その中から虎が一匹と小人が一人出てきた。
あまりに唐突な出来事だったので腰を抜かして驚き、その痛さから「これは夢なんかじゃない」と悟った。
もうだいぶ気が滅入っていたのか、この日は、夕方まで何をしていたかすら忘れてしまった。
家からあの白い小人が出てきて、初めて口を開く。
「突然だけど俺はリンって言うんだ。お前は?」
「はぁ...○○(現実の名前)ですけど」
「ふーん、お前は俺達を捕まえたりはしないんだな」
その手があったか、なんて冗談を言おうと思ったが怒られそうなのでやめた。人間は小人とかいう珍しい生き物を見ると、捕まえたくなるのが性根なのだろう。
「そんなことよりも、ここには夜な夜な人狼が出る。食われたくなきゃ、気をつけるんだな」
夢が覚めるなら食ってもらった方が早いわ...そう言いたいのを抑えて、助言通りに明かりを少しつけて寝ることにした。
次の日、誰も食われてなんかいなかった。
その日も一日中ボーッとしていて、窓辺に座っていて気付いたら日が暮れている...そんな感じ。
どうやら小人も飯を食うようで、4人くらいの小人が寄ってたかってご飯を要求してくる。
出前でも取ろう...そう思ったけど、時間はかかるわ料金は高いわ玄関に近付きたくないわで却下。
虎達に生肉を与えてから冷蔵庫にあった野菜を適当に炒めて、あとは全てレトルトでサッと済ませ、久しぶりに大人数で食卓を囲んだ。
(日付を越えてしまい申し訳ありません...多目に見てください...)